イカダバエ
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更新日:17 時間前
鵜飼シーズンを終えても、長良川の魅力は途絶える事を知りません。つい先日、長良川に向かう通りがかりのお店で「イカダバエ」の貼り紙を見かけました。真冬の長良川の味覚です。急に「イカダバエ」を食べてみたくなり求めました。
「イカダバエ」とは内陸部で「白(しら)ハエ」と呼ばれるオイカワという魚の事、もしくはその佃煮の事をさします。他に磯釣りを楽しむ岩礁地帯もこの名で呼ばれています。
一般的に水上構造物を「筏(いかだ)」と呼びますが、材木を係留した下に集まる白ハエを「イカダバエ」と呼ぶのが語源になったとされています。

お正月のおせち料理で「田作り」を食べて間もない舌には、海の干し魚とは違った、川魚の身の柔らかさと、少しホロ苦みもある身の甘さが何とも優しくて滋養のある味に思えます。
熱々ご飯に載せるのはマチガイないのですが、左党の方は、肴としても好適です。
長良川では昭和30年代まで、「餌飼(えがい)」と呼ばれる冬の間の餌を求めて鵜匠さんが鵜と共に河川を巡った慣習がありました。きっとその時、真冬の鵜たちは、鮎の居ない川で小さな白ハエを一生懸命幾つも捕まえて、腹を満たしたことだろうな、今、自分はそれと同じ魚を口にしているな、と昔の長良川の風景に想いを馳せます。
ここ長良川流域では、冬に入ると「イカダバエ」を炊くと言って、扱うお店ではキロ単位で佃煮を作ります。しょうゆ・みりん・砂糖・刻み生姜などで調味されお店ごとの味が楽しめます。時期は12月から2月末頃までです。寒バエとも呼ばれるこの時期の白ハエは、川虫が居ない冬場の時期は苔を食べて過ごすため魚臭さが抜け、寒ければ寒いほど美味くなると言われています。
実は、この「イカダバエ」今はとても貴重な冬の味覚なのです。理由は、日本人の食習慣が変化し川魚を食べる機会が減った事にあります。そして「イカダバエ」を獲る川漁師さんの数も少なくなり、安定的に原料の入手をする事が極めて困難になってしまったからです。さらに、この長良川では「イカダバエ」を取る際、ぼうちょう網漁という、一人ではできない、大変難易度の高い漁で捕らえられている事も、この漁が行われる機会が減っている理由です。
ぼうちょう網漁は、まず竹竿を先に黒い布切れを付けます。それを水中の魚を追う水鳥の様に動かして、分散した白ハエを大きな群れにしていきます。そして予め定置していた四手網の中に追い込んで掬い上げるのですが、その竹竿さばきが水鳥の様に上手くできる迄、10年掛かると言われています。
そんな「イカダバエ」ですが近年漁獲の減少が続き、売らなくなったお店もちらほら出てきました。また「ハエ」をコイ科の雑魚の総称と広義に捉え、琵琶湖などのモロコを原料にした佃煮を「イカダバエ」と称して売っているお店もあります。勿論、冬のモロコ自体は大変美味しい魚ですので、味の違いや魚の大きさの違いなどがあっても美味しくいただけます。それよりも長良川の「オイカワ」を食べているつもりで他所で獲れた「モロコ」を食べていたという事になるので注意が必要です。長良川の冬の味覚に拘るのであれば、買う時に「このお魚はどちらで獲れたのですか?」と聞いてみると良いでしょう。

そんな希少な「イカタバエ」。長良川の豊かな自然の恵みを利用した、この郷土料理が少しでも長く食べ続けられる様に、これからも目にしたら必ず買おうと誓い、難なら今度、お歳暮で送ってみようかなと思うのでした。皆様も目にする機会がありましたら、是非一度ご賞味されてはいかがでしょうか。ご進物用の箱入りだけではなく、日常遣い様に安価にパック売りをしてくれるお店もあります。
記:深山




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